高知遺産

掲題の題名の本を、実家に帰った時に見つけた。
高知の中の、古くて味のある光景を集めた写真集だ。


街は変遷するもの。
しかし、あまりにも今の変遷は激しすぎる。
高知県人の気質である“新し物好き”の精神が
それに拍車をかけているのだろうか。


高知も随分モノが増えた。
スパーしかなかったコンビニだって、数年前にできたローソンを皮切りに
サンクス、サークルK、ファミマなどのコンビニが続々街を埋め尽くしている。


激しい変化の象徴は、高知インターの近くで要塞のようにそびえている
イオンショッピングセンターだろう。
そこには、高知になかったシネコンタワーレコードがあり、
モノが溢れ、そして人もそのモノを求めて溢れていく。


逆に帯屋町を中心とする中心商店街が“かなり”寂しくなった。
映画館が消え、店が消え、“とでん西武”が消えた。
高校の頃の友人の家であったレコード店も消えた。
アニメと演歌に関しては、おそらく四国最強の品揃えを誇っていたのだが。


その街の変遷の中で今にも消えていきそうな建造物や物などを集めた写真集。
それが“高知遺産”という本。


読んでみると、なるほど。
自分にとって当たり前の風景が、こうして見るとすごく魅力的に見える。


特に第2章の「ラビリンス旭」。自宅の近所の光景ばかりだ。
自分の家は高知市の中心街にあるのだが、家の近所には戦争で残った
トタンぶきの家や、古い橋などが多く残っていた。
その光景もいずれ消え行く運命なのか。この本を見て、何気にそう感じた。


この章を読み進めていくと、自宅のすぐ近くが写っていた。
鉄の欄干がある橋と、そこにあるゴム製の堰。
自宅の目と鼻の先にある光景。
後で知ったのだが、鉄の欄干の橋は、
建築技師をやっていた自分の爺ちゃんが作った物らしい。


そして、もう一つ。ポップな絵柄のライブハウスの壁。
見覚えがあるも何も、音楽好きだった親父が作ったライブハウス。
子供の頃にあそこには何度も行った事がある。
昔はすごく退屈な空間だったなぁ。防音ドアを開けるとやかましかったし。
今は自宅の地下と3階に移り、あの場所はもう、何もない。
ただ壁に、あの時の面影が残るだけ。


「昔は賑やかだったのだろう」というコメント。
失礼な。今でも結構賑わってる…多分(苦笑)。


そしてふと思う、自分はあの地に何が残せるだろうか。


自分が地元に拘る理由は、
そんな他愛も無い対抗心が根底にあるのかも知れない。